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保育の根っこ

 全国私立保育園連盟が発行している保育通信8月号で、7月1日に村田保太郎先生が95歳でお亡くなりになったことを知りました。私が主任になった20年ほど前、全国社会福祉協議会発行の『保育の友』で『保育の根っこにこだわろう』というコラムを書かれていて、読むたびにドキッとさせられたことを思い出します。


『保育の根っこにこだわろう』は21年間280回にも及んだそうです。2,3度直接ご講演を聞かせていただいたこともあり、そのたびに保育の厳しさと深さを知らされました。


 一番心に残っているのは、40代、50代の保育士に向けた言葉です。「美しく年齢を重ねた40代、50代の保育者の皆様」という呼びかけで始まる文章に、背筋が伸びました。40代、50代をとうに過ぎてしまったのですが、当時は40代、50代は園のリーダー的存在で、ちょっと怖い保育士の方が多かったように感じました。


 40代、50代の保育士は、子どもを躾ける、子どもを指導するという意識が強く、大人の価値観を押し付けているのではないかと村田先生は率直に言われました。『子ども主体』という言葉は、今の保育園では当たり前になっていますが、当時は保育者主導が大半でした。


 40代、50代の保育士は、経験を重ねているので、子ども達が言うことを聞きます(子どもも人を見ます)。若い先生が食べさせて食べなくても、ベテランの先生が食べさせると食べるので、それを保育力と勘違いしてしまう人もいました。そんなことを率直に指摘される方はあまりいなかったので、今でも記憶に残っています。


 子どもに言うことをきかせられない保育士は未熟で、「甘く見られてるんじゃない?」と言われて、悲しい思いをした人もたくさんいたと思います。不適切保育が報道されるたびに、いまだに子どもに言うことをきかせるのが保育だと思っている人がいることを感じます。


 

 でも、これは保育園だけの問題ではなくて、日本の子育ても同じではないでしょうか?子どもは大人の言うことを聞くのが当然で、親の価値観を押しつけてはいないでしょうか?


 子どもは独自の人格を持っている一人の人間です。子どもは一人の人間としてその子が好きなことや大事にしたいことが尊重される権利を持っています。その子なりのこだわりを大事にして、自分で選んで自分で行動する権利を保障してほしいと思います。


 保育園は、子育てをされている方のモデルとなるように、子どもの人権を大切にし、子どもが自分らしく成長していく場にならなくてはと思います。20年以上経って、村田保太郎先生が言われていたことが本当に理解できるようになりました。村田保太郎先生のご冥福を心よりお祈りいたします。

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