本物の力
昨年の4月に年長組になったKちゃん。Kちゃんには2年前に卒園したお兄ちゃんがいます。年長組になってすぐ、「園長先生、Kちゃん代表になれる?」「どうしたら、代表になれるの?」「Kちゃん、頑張ってお話聞いてるから代表になれるよね?」と何度も訊かれました。代表って何のことだろうと思いながら、後で担任の先生に尋ねようと思っていつも忘れていたのです。運動会が近づいたある日、また「園長先生、Kちゃん運動会の練習がんばっているから代表になれるよね?」と訊かれ、「あ!・・・運動会の代表のことだ」とやっと思い当りました。
例年、運動会の閉会式の時に、3・4・5歳児から2名ずつ前に出てみんなの代表で金メダルをもらっていました。Kちゃんは、お兄ちゃんが代表でメダルをもらった姿にずっと憧れていて、年長組になったら自分も・・・と思っていたのです。うっかりしていた自分が情けなく、2年間ずっとその思いを抱いて、目標を持ってがんばってきたKちゃんはすごいと思いました。
もちろん、担任の先生はKちゃんを代表にしました。担任の先生だけじゃなく、お母さんも、他の先生もみんな知っていたそうです。
運動会当日、Kちゃんはとび箱で自分の順番が来た時に、突然今まで跳べなかった5段を跳ぶと言いました。担任の先生も驚いて、みんなが見守る中、「Kちゃん、本当に跳ぶの?」と訊くと、Kちゃんは、担任の先生の眼をしっかりみつめ、拳を握りしめて「うん」と言いました。その時のKちゃんの意思が宿った強い眼が忘れられません。5段は跳べませんでしたが、あの緊迫した状況の中で、一つ上のことに挑戦した姿に感動しました。
毎年運動会当日になって、一つ上のことに挑戦する子がいます。先生達はとても慌てるのですが、止めたりはしません。できることが大事ではなく、挑戦しようとする気持ちが大事だと思っているからです。
難しいことに挑戦しようとする、諦めずに最後まで取り組もうとする、これは本物の力です。一朝一夕につく力ではありません。
昨日「子どもの眼の色が違う」と保護者の方が言われたことをブログに書きながら、Kちゃんや他の年長組の子ども達の姿を思い出しました。早く現場に戻りたいです。
『りんごの花保育園』開園まで44日