母乳
最初の子どもを出産したとき、一番辛かったのは、母乳が出ないことと眠れないことでした。赤ちゃんにとって母乳がいいことはよくよくわかっていても、出ないものは出ないのです。
心配した母が母乳に良いと買ってきてくれた食べ物を食べたり、マッサージに行ったりしましたがなかなか効果が出ません。女の子だったので、吸う力が弱く、飲んでもすぐに疲れて眠ってしまい、またお腹がすいて泣くを繰り返し、ほとんどまとまった時間眠ることができませんでした。
1か月検診の時、産婦人科の先生に相談したのは、「この子、まったく寝ないんです。どうすればいいですか?」産婦人科の先生は、「赤ちゃんはちゃんと寝ているから大丈夫」と言われましたが、本当に寝てくれませんでした。
毎日授乳の度に、借りてきた赤ちゃん用の体重計で計り、「〇グラム増えた」と記録しては、一喜一憂していました。3ヶ月くらい経つと、母乳も出始めましたが、乳腺炎になりかけたり、母乳については辛い思い出しかありません。
睡眠不足やイライラは、母乳に影響します。今になると、悪循環だったと思いますが、その当時は、母乳をやらなくては、お母さん失格なんじゃないかと思い詰めていました。冷静な判断ができなくなっていたんですね。
それから2年後、友達に赤ちゃんが生まれたと聞いて病院にお見舞いに行きました。病室のベッドに座った友達は、搾乳器を握りしめ、「全然母乳が出ない」とうつろな目をして言いました。「母乳じゃなくても大丈夫だよ。足りない時はミルクをあげてもいいんだよ。」と言うと、「看護師さんが母乳じゃなきゃダメって言うの。」
産後はただでさえ精神的に不安定で、産後うつになる人も少なくありません。母乳がいいのはわかっていても、それが母親を追い詰めることもあるのです。
最近読んだ乳児保育の本に、「母乳育児は最も優れているが、粉ミルクでも赤ちゃんは普通に育つのです。母乳がいちばん、でも母乳でなくても大丈夫なのです。赤ちゃんに母乳育児を行うことが困難なワーキングマザーには、粉ミルクは選択可能なオプションなのです。母乳で育てなければ母親ではない、とか、母乳以外は1滴たりとも粉ミルクは与えるべきではない、といった極端な考え方がありますが、あまり科学的な根拠はありません。」と書いてありました。
母乳でなくても大丈夫と言ってくれる専門家がいてくれたら、あんなに辛い思いをしなくても良かったのに…と今頃になって思います。