帚目
保育士になって働き始めた保育園の園長先生は、ご高齢の神社の神主さんで、厳しい方でした。
私達の動きが悪いと、すぐに「このやぶれ保母が・・・」と怒られました。今だったら、パワハラです。でも、本当は思いやりがあって、福祉のために私財を投げ出し、ご自身は粗末な家に住まわれていて、尊敬できる方でした。保育について指導されたことはありませんでしたが、掃除は厳しく指導されました。
炎天下での溝掃除と草取り、神社の落ち葉掃除、下の道路から保育園までの坂道の掃除・・・雨が余程ひどくない限り、園庭を掃いて松葉箒で箒目を入れるのが日課でした。園長先生の機嫌がよくなるからとそれは代々受け継がれました。
りんごの花保育園の前に勤めていた園の園庭は、広くてとても帚目などつけられなかったので、毎朝箒目を入れていたことをすっかり忘れていました。
りんごの花保育園の園庭は狭いので、朝、門の前に立つ当番の日は、箒目を入れることにしました。松葉帚で掃くと、ゴミだけでなく、大きな石、動物の糞など、危険なもの、不衛生なものがあればすぐに気づくことができます。厳しく掃除を指導してくれた園長先生は、保育園の園庭にとって帚目を入れることがいかに大切かわかっておられたのでしょう。
時代や社会状況が変わっても、大事にしなくてはいけないことに気づかされました。久しぶりに厳しくも優しかった園長先生を思い出して、改めて感謝の気持ちが湧いてきました。