お母さん(お父さん)のお弁当
りんごの花保育園には、毎月発行している『りんごの花だより』があるのですが、今月も、全国私立保育園連盟の保育通信で鯨岡峻先生が、保護者(お母さん)に向けて書かれたコラムを掲載させて頂きました。
以前もご紹介したように、鯨岡峻先生は、エピソード記述を書いて、その記録から子どもと保育者が関わるときに生まれる接面で保育を振り返ることが大切だと言われ、全国津々浦々で研修会の講師をされている高名な先生です。
その鯨岡先生が、保護者(お母さん)に向けて書かれるメッセージはとても貴重なので、毎月の園だよりで紹介させてもらっています。
今回は、お弁当にまつわるお話でした。『お弁当の日』がある保育園での3歳の女の子のエピソードです。朝早くから夜遅くまで働いているシングルマザーのお母さんは、保育園のお迎えの後、夜ごはんを実家で食べて、家に帰って寝るだけの日々を過ごしています。
お母さんの大変さがわかる女の子は、お母さんに『お弁当の日』の手紙を渡すことができません。とうとう担任の先生に、「お母さんに言ってほしい」と頼みます。その話を担任の先生から聞いたお母さんは困った顔をして帰られます。でも、翌日、「お母さんがお弁当作るって言ってくれた」と嬉しそうに女の子が担任の先生に報告し、当日、お弁当を食べた女の子は、みんなに聞こえるような大きな声で「あ~、おいしかった!」と言いました。
お迎えに来られたお母さんに、そのことを話すと、「本当に大変だったんですよ。しばらく料理なんて作っていないし。」と言いながら嬉しそうなお母さんを見て、担任の先生も嬉しかったというエピソードです。
朝早くから夜遅くまで仕事をしているお母さんにとって、お弁当作りは本当に大変だと思います。それがわかっているので、お弁当のことを話せない3歳の女の子の心の成長には驚かされます。それでも頑張って作ってくれたお弁当で、女の子はお母さんの愛情を感じることができたのでしょう。
りんごの花保育園のI先生も、このエピソードを読んで涙が出ましたと話してくれました。お母さんの気持ちと女の子の気持ちを考えると、ちょっと切なくなるお話ですね。
以前勤めていた保育園も、1ヶ月に1回『お弁当の日』があって、子ども達は心待ちにしていました。毎月、朝5時に起きて、キャラ弁(キャラクター弁当)を作ってくれるシングルファザーのお父さんがいらっしゃいました。お弁当には、お父さんの愛情がたっぷり感じられました。
お仕事で忙しい中、1か月に1回のお弁当の日がお父さんの愛情を伝える大事な日だったと思います。きっと、大きくなってもずっと心に残ることでしょう。
私も、このコラムを読みながら、小学生の遠足の時、母が作ってくれたお弁当を思い出して涙が出ました。この歳になっても、母の愛情は心を温めてくれます。