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偉人

 昨日見学をさせて頂いた児童発達支援センターの理事長先生は、30年以上前に当時2歳だった娘を連れて受診した歯医者さんでした。2歳の娘は虫歯が何本もあり、治療したくても小さいので受け入れてくれる歯医者さんがありませんでした。


 インターネットなどなかったので、いろいろ自分で調べて連れて行った評判のいい歯医者さんで、当時から障がいのあるお子さん達が通っていました。あの頃、他の歯医者さんは、子どもをネットで縛り付けて治療をしていました。待合室で泣き叫ぶ娘の声が聞こえてくると、耳を防ぎ、自分を責めて落ち込みました。


 私は産後8週から職場復帰したので、ずっと母が育ててくれました。食が細い娘を心配して、甘いジュースやヤクルトを飲ませていたのですが、それをやめてほしいとは言えず、歯磨きもしっかりしていませんでした。今の子ども達は、ほとんど虫歯がなくて、とてもきれいな歯をしています。働きながらも、しっかりお子さんの歯の管理をされている保護者の方を尊敬します。


 ネットで縛り付ける歯医者さんに行くのはあまりに辛かったのでやめましたが、その後福岡の歯医者さんで治療中のお子さんが亡くなるという痛ましい事故が起きました。歯医者さんも子どもが動くので縛り付けるしか方法がなかったのでしょうが、他人事には思えませんでした。


 歯医者をされていた理事長先生は、保育士を雇用してどうして子どもが泣くのか尋ねられたそうです。何をされるのかわからないから怖くて泣いている、お母さんと離れて不安で泣いているかもしれないなど、泣く原因について話し合い、対応を考えられたそうです。あの時代にそんな考え方をされる方はいらっしゃらなかったと思います。


 今では、子ども達に治療器具を見せ、それを何に使うのか、どんなことが起こるのか(風が出る、水が出る)など、子ども達にわかるように説明しながら、丁寧に治療を進めていく小児歯科がほとんどだと思います。


 療育も保育も同じです。子どもが困ったり、問題行動を起こすのには必ず理由があります。それをわからない、わかろうとしない私たちが子ども達の問題解決を阻んでいるのかもしれません。子どもの立場になってみる、どうしたら伝わるのか、一人ひとりの子どもに合わせた対応を試行錯誤しながらやってみることが子ども達の成長を後押しするのでしょう。


 歯医者さんから療育・保育の世界に入られた理事長先生のすごさにはとても及びませんが、私たちにもできることがあると思います。そう信じて前に進んでいきたいと思います。

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