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ペストの記憶

 コロナウイルス感染が拡大する中、なぜこんなことが起きてしまったのか考えることはありませんか?人は災難に出会った時、原因を探り、強いては自分の中にその原因を見出そうとします。


 こんな災難に出会うのは、自分のせいではないかと自分を責めてしまうこともあります。でも、ウイルス感染は、これまでたまたま出会わなかっただけで、起こるべくして起こったことです。


 1918年から1919年に大流行したスペインかぜは、全世界で5億人が感染し、1億人以上の人が亡くなったというデータがあります。それ以前では、14世紀に世界人口4億5000万人のうち、1億人がペストで亡くなりました。


 スペインかぜも、ペストも壊滅しているわけではなく、今後も感染リスクは続き、今回のコロナウイルスと同じように、人類がずっと戦っていかなくてはいけない相手だと言えます。


 医学が進歩したと言っても、変容し続けるウイルスとの戦いは永遠に続くわけです。幸いなことに、これまで回避できて来ただけなのですね。怖いです。


 過去に学びたいと、1722年にイギリスで出版された、ダニエル・デフォーの『ペストの記憶』について、NHKの100分名著のテキストを手に取ってみました。ドキュメンタリーではないのですが、1665年にロンドンで発生したペストに関して、死者の数や当時の法令などがそのまま引用されている小説です。


 当時のロンドンの行政は、ペストという恐ろしい病に対して、様々な施策や仕組みを作りました。その条例の中に、「節度のない者たちと無駄な集会に関する条例」というものがあります。


 芝居(すべての芝居、熊いじめの見世物、賭博など、人を大勢集めるような催しを一切禁止する。)

宴会の禁止(公共の場で宴会を行うこと、特に市の商業組合の宴会、皆が飲食する場所でのディナーパーティーは、追って許可が出るまで禁止する。)店での飲食(居酒屋・ビアホール・コーヒーハウスおよび酒蔵で節度をわきまえずに深酒をするのは、今日広く見られる過失であり、ペストが蔓延する最大の原因でもあるから、これを厳重に取り締まる。午後9時以降、いかなる団体も個人も、飲酒のために居酒屋、ビアホール、コーヒーハウスに入ることも残ることも禁じる。)


 現在行われているコロナウイルス感染拡大防止のための対策と全く同じです。違いといえば、350年前は条例を破れば厳しい罰則があったということです。


 医学や情報が発達していない350年前にできたことが、現代社会の人にできないわけはありません。ウイルスは人の手を介して拡大します。それが証明されて、対応策もわかっているのですから、一人一人が自覚をもって行動しなくてはと思います。


 

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