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心の傷を癒すということ

 昨日、今日と、東日本大震災の報道番組を見て、11年経っても、大事な人を亡くした人の悲しみは癒えないことを改めて感じました。月日が経てば悲しみは薄らいでいくように思うのですが、人の心はそんなに簡単に大事な人や大事な人と過ごした時間を忘れることはできないのですね。


 阪神大震災の時に、被災後の心のケアについて精神科医である安克昌さんが書かれた著書『心の傷を癒すということ』を何度も読み返しています。阪神大震災が起こるまで、心のケアについてあまり語られることはなかったそうです。現在、心の問題は大きな関心事ですが・・・。阪神大震災が人の心に与えたダメージの大きさに心を痛めた安克昌先生が、全国のボランティア医師を募って、避難所に派遣するなどコーディネーターとして活躍されたことで、心のケアについて注目が集まったそうです。


 『心の傷を癒すということ』というタイトルで、映画化やNHKでテレビドラマ化されたので、ご存じの方も多いと思いますが、阪神大震災で傷ついた多くの人々の心の傷を癒すために奔走された安克昌先生は、39歳という若さで肝細胞がんのために亡くなりました。3番目のお子さんが生まれて2日目のことです。阪神大震災後の心労や過労が安先生の命を縮めたことは否めないだろうと、当時の安先生の活動を目の当たりにした方たちが記されています。


 当時、まだPTSD(心的外傷後ストレス障害)という言葉がほとんど認知されていないときに、ご自身も被災者でありながら、心の傷に着目され、多くの人々の心の傷を癒すために身も心も砕かれた安先生が記された著書『心の傷を癒すということ』は、現在でも大きな影響を与え続けています。


 著書の中で、大切な人を亡くした人に、「もう時間が経ったから、そろそろ立ち直ってもいいころじゃないか」「〇〇さんは、もっとつらい思いをしているんだから」などという言葉がどんなにその人を傷つけるかについて書かれています。


 私たちは、つい元気になってほしいと思うあまり、大切な日を亡くして立ち直れない人を激励したり、他人と比べたりした言葉をかけてしまいますが、心の傷はその人自身にしか癒せないのかもしれません。よかれたと思ってかけた言葉がどんなに傷ついている人の心をさらに傷つけてしまうのかを知り、これまでの自分の言動を振り返り、いたたまれない気持ちになりました。


 ロシアとウクライナの戦争が激しさを増し、多くの命が失われています。その一つ一つの命が失われたことで、どれだけたくさんの人がこの先悲しみを抱え込むことになるのでしょうか。心の傷を癒すことは誰にもできないのに・・・。




 
 
 

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