目には見えないもの

 『ハイパーワールド〜共感し合う自閉症アバターたち〜』を読み終えたのですが、面白くて難しかったので、もう一度読み直しています。


 ニューヨーク在住で、社会学者、歴史社会学者であり、大学で教鞭を取る池上英子さんが、なぜ仮想空間でアバターとなった自閉症スペクトラムの方々と交流し、この本を書かれたのかも興味深いです。


 アメリカでは、50人に1人自閉症スペクトラムの方がいると言われています。詳細な調査はないのですが、同じ人間なので日本も同じだと思います。


 生活するのに支障があれば、検査を受けたり診断名をつけられて、なんらかの支援を受けようとするのでしょうが、自閉症の中には知的な遅れがない人もいるので、わざわざ診断名をつけられる必要がないと考えている人もたくさんいらっしゃるようです。


 この本を読んで一番考えさせられたのは、世界は大多数の定型発達者を中心に回り、自閉症始めマイノリティの人達の声に耳を傾けてこなかったということです。


 自閉症は、コミュニケーションに支障を抱えていると言われていますが、仮想空間の中では、アバターとして共感性がある豊かな交流が行われていることを知りました。


 感覚過敏がある自閉症の人達が仮想空間では、匂いや音など雑多な刺激を受けずに、自由に発言し、交流している姿を想像すると、爽快な気持ちになります。


 「仮想空間で遭遇した自閉症の人々が語っていた内面世界は、情報を過剰なままに取り込んでいる強烈な脳内景色、ハイパーワールドだった。」という著者の言葉を読み、仮想空間だからこそ表現できる自閉症当事者の世界を覗いてみたいと思いました。


 身体を思うように動かせない自閉症の人はアバターとなり、仮想空間で、自由にダンスをしたり、饒舌に語っています。目に見えるものしか理解しようとしない自分の世界の狭さを思い知らされたような気がしました。


 私は子どもに携わる仕事をしているので、大人よりもさらに表現する力が弱い子ども達の声にもっと耳を傾けて、その子の世界に入っていき、その子が大切にしているものを理解し、一緒に楽しみたいと思います。

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