ブラブラ期
- 智子 大瀧
- Apr 15, 2021
- 2 min read
以前、北海道大学大学院教育学研究院准教授である川田学先生の著書『保育的発達論のはじまり』について書いたことがありますが、おもしろい話が載っていたのでご紹介します。
川田先生の研究室にいた中国青海省海南チベット自治州出身の留学生のSさんから聞いた話だそうです。
夏、Sさんが修士論文のフィールドワークのために長い旅路を経て村に着き、実家までの道を歩いていると、2、3歳くらいの男の子が、「おねえさん、ふいて」と葉っぱを手渡したそうです。彼女は久しぶりのことに戸惑いながらも、男の子のお尻を拭いてあげると、男の子は「ありがとう」と言って去っていったという話です。
この村の乳児は、親と一緒に畑に出たり、仕事に行ったりして、4、5歳になると、多少の労働力として農耕や牧畜を手伝うことも多いそうです。
「じゃあ、2、3歳は?」とSさんに聞くと、彼女は一瞬ハテと考えて、それから少し笑いをふくんで、「ブラブラしてます。」と言いました。「ブラブラしているって、排泄や食事はどうしているの?」と尋ねると、「おしっこ、ウンチは道端で・・・。お腹が空いたら適当に近くの家で食べさせてもらったり、夜になったら泊まったりすることもある。」と答えたそうです。
世界には想像を超える現実があるんですね。日本では、これまで親の言うとおりに動いてくれた子どもが、自我が芽生え、抵抗をし始めると、『イヤイヤ期』『魔の2歳児』と呼び、やれやれという感じですが、一日のスケジュールが決まっていて、様々な規律の中で生活しなくてはいけない日本社会なので、大人の思う通りに動いてくれない子どもの成長が嬉しいことと感じられなくなるのかもしれません。
チベット高原の子育てのようにはいかないと思いますが、大人の見方や捉え方次第で子どもへの関わり方は変わります。この『保育的発達論』は、〇歳までに〇〇ができるようになる・・・というように発達をできる・できないという評価で考えるようになっている現代の子育てが、いかに子どもや親を追い詰めているかということについて書かれています。
保育園という小さい世界で、子ども同士を比べてみたり、〇歳になったのに〇〇ができないけど大丈夫だろうか?と考えがちな思考に、一人一人を見ることの大切さを改めて教えてくれました。ブラブラしているように見えて、自分の世界をしっかり広げ始めている2歳児の日々をより楽しいものにしてあげたいと思います。
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